社会のさまざまな場面で活躍している文系出身者。
文系の授業や研究を通じて培った能力やスキルは、仕事の場でもしっかりと生かされています。
では文系出身の強みを生かせる職業には、どのようなものがあるのでしょうか。
今回は395人の文系出身者にアンケートを行い、「文系におすすめの職業」をランキング形式でまとめました。
- 調査対象:文系出身者
- 調査期間:2025年8月12日~26日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:395人
- 回答者の年代:20代 24.1%/30代 33.3%/40代 21.3%/50代以上 21.3%
文系におすすめの職業1位は「営業職」

文系出身者395人に「文系におすすめの職業」を聞いたところ、1位は「営業職(33.4%)」でした。
2位「事務職(27.8%)」、3位「広報(14.7%)」、4位「企画職(11.9%)」が続きます。
営業や事務といった、「人とのやりとりが多い仕事」や「協調性を大切にしながら組織を支える仕事」が上位を占めました。
また、事務・広報・企画・マーケティング・ライター・編集者などは、文章を読んだり作成したりすることも多い仕事で、言葉に関する力を活かせます。
1位 営業職
- 文書作成や相手との深いコミュニケーションを必要とする業務が多く、一定の国語能力や文章理解力が必要であるため(20代)
- 海外営業。メールでのやりとりがほとんどのため、文章読解力がある文系の強みを活かせるから(40代)
- 営業や企画は、人と向き合う力がすべての基本です。数字や商品だけではなく、信頼関係が大切になります。そのため文系の人が培ってきた「読解力」「表現力」「幅広い知識」が活かされます。私自身、お客様の要望を丁寧に聞き取り、わかりやすくまとめて伝えることが評価につながりました(50代以上)
1位は「営業職」でした。
「営業職が文系出身者に向いている」と考える理由としては、コミュニケーション能力や国語力が求められるか」という人が多くなっています。
顧客によっては、営業担当者が信頼できるから買うというケースもあり、信頼関係の基本となるコミュニケーション能力は、営業担当者にとって重要な能力のひとつです。
また営業資料作成やメールでのやりとりでも、相手にわかりやすく誤解なく意図を伝えるためのコミュニケーション能力や国語力を生かせます。
2位 事務職
- 経済や簿記などの知識を活かして仕事ができるからです(30代)
- 営業事務。文章を考えたり、人への伝え方を考えたりする機会が多いから(30代)
- 事務と言っても幅広いですが、企画書など文書作成などの仕事が多いため(50代以上)
2位は「事務職」でした。
事務職は書類を作成したり読んだりすることの多い仕事です。
文系出身者が得意とする「言葉を使って整理し、わかりやすくまとめる力」が事務職で生きるため、おすすめだと考える人が多くなっています。
また文系学部で学べる経済、簿記、会計、法務などの知識を、直接的に活かせる事務系職種もあります。
3位 広報
- 発信する文章や言葉の選び方などが、広報では大切な能力であると感じる。文系で国語力や小説など本を読む習慣がある人のほうがいいと思う(20代)
- SNSチェックに余念がなく、文章作成が得意な文系の人にとっては天職だと思います。いま広報は完全に専門職として独立しだしているので、極めると多くの報酬が得られるのも魅力です(30代)
- 広報は技術的な専門知識よりも、「人とのつながりを築く力」が重要になるからです。多様な価値観をもつメディアや社内外の人と対話し、ひとつの事柄を多角的に捉え、どうすれば伝わるかを考える力が必要とされます。文系で培われる「人への理解力」やコミュニケーション能力を最大限に活かせます(50代以上)
3位は「広報」でした。
広報は、情報をどう伝えるかを考える仕事です。
発信する文章ひとつで相手の受け取り方が変わるため、言葉選びや表現力といった文系的なスキルが求められます。
そのため文系出身者におすすめだと考えている人も多くなりました。
「文系スキルが生かせる仕事の中でも、高収入が期待できる」という声も寄せられています。
4位 企画職
- 「資料作成力」「発想力」「文章力」など、いろいろな文系の力が必要になるから(20代)
- 営業等と異なり、個人の能力だけではなく、仕事の異なる他部門の人にも働きかける必要がある。バックグラウンドの異なる人にもわかりやすく説明したり関係性を構築したりするのは、文系のほうが向いているから(30代)
- 文章を書く機会が非常に多いです。企画職は提案を企画書にまとめてプレゼンをする機会が多く、説得力があり、魅力のある文章を書く能力が必要です(40代)
「企画職」が4位です。
企画職は、アイデアを形にし、人に伝えて動かすことが求められる仕事。
企画書をまとめ、上司や協力してくれる部署などの周囲を納得させるためには、文章力や説得力ある表現力も重要です。
そのため文章力や発想力を培ってきた文系出身者にとっては、能力を生かしやすい仕事だと考えられます。
5位 ライター
- 国語力・文章力やリサーチ力が直接活かせるから(30代)
- 特別なトレーニングをしなくても、すでに基礎言語力・伝達力が高い(30代)
- 文章にずっと触れてきた文系なら、苦もなく楽しく仕事ができるから(40代)
「ライター」が5位に入りました。
ライターは直接的に言葉を扱う仕事です。
国語力や文章力はもちろん、テーマを調べて整理するリサーチ力や、読者に伝わるように構成を工夫する力も大切になります。
文系出身で日常的に文章や本に触れてきた人にとっては、自然に身についている力を活かせる点がメリットです。
そもそも本や文章を書くことが好きで文系を選んだ人にとっては、好きなことが仕事になるのも魅力となっています。
6位 公務員
- 役所仕事以外にもいろんな業務があり、文系の人にぴったりな仕事は見つかりそうだから(20代)
- 法令などの難解な文書を読み解けないと、仕事にならないから(30代)
- コミュニケーションは文章で行うことが多く、法律のような独特の文章を読み解ける力や相手に合わせた説明をする能力を活用できるから(50代以上)
同率6位は「公務員」となりました。
公務員には事務系のほか、公安系・医療系・教育系・技術系などさまざまな仕事があり、文系出身者の強みを生かせる仕事もあります。
また法律や条例などに触れることも多く、難解な文章を読み解いたり、わかりやすく伝えたりする力も求められます。
そのため文系で培った読解力や説明力が役立つのですね。
「一般企業やフリーランスと比べた場合の安定性」「文系出身者が昇進しやすい」といった点を魅力として挙げた人もいました。
同率6位 編集者
- コミュ力が高く、やり取りや折り合いをつけるのがうまいから(30代)
- 編集の仕事は論理で詰めていく作業です。文章の読解や構築ができる文系の人にとっては非常にマッチしている職業だと思います(40代)
- 国語能力や文章力が必要な職業だからです(50代以上)
同率6位は「編集者」です。
編集者は、文章を読み解き、他者と調整しながら作品や記事として形にしていく仕事です。
そのため国語力や論理的な思考力を備えた文系出身者にとっては、能力を活かせる仕事となっています。
編集は著者やライターなど人と関わり折衝しながら行う仕事でもあり、自分と相手の都合に折り合いをつけて進めていく力が必要です。
そのためコミュニケーション能力に長けた文系出身者におすすめする人が多くなりました。
言葉や情報を扱うことに親しんできた文系出身者にとって、強みを存分に発揮できる仕事です。
8位 マーケティング
- 市場の動向を常に追い続ける必要がある仕事です。変化の速い環境だからこそ、学び続ける力とわかりやすく伝える力が求められます。そこに文系の強みを活かせると考えています(20代)
- 商品を売るためには、数字の分析だけでなく「人はなぜこれを欲しがるのか」という心理や社会のトレンドを深く理解する必要があります。こうした人間や社会への洞察力は、まさに文系で培われる強みだからです(30代)
「マーケティング」が8位に入りました。
マーケティングは、どうすれば消費者に自社商品やサービスを選んでもらえるかを考える仕事です。
ビジネスのトレンドや人の心理を分析する必要があり、文系学部で学べるビジネス・マーケティング・心理学などが生かせます。
数字への強さや統計学も重要になりますが、「人はなぜ欲しがるのか」という背景を洞察する力が必要となるため、人文系の知見や柔軟な発想が力を発揮します。
文系で良かったと思うことは「話のネタに困らない」

文系で良かったと思うことの1位は「話のネタに困らない(24.6%)」でした。
2位「文章を書くのが苦にならない(19.0%)」と答えた人も、20%近くと多くなっています。
仕事の場面で活かせる言葉の力や、人とのつながりにまつわる項目が多く挙がっています。
また、わかりやすく文章を書いたり説明できたりすることで、コミュニケーションが円滑になることも考えられます。
1位 話のネタに困らない
- 文学部フランス文学専攻だったので、「フランス語を勉強していた」と話すと相手の記憶に残りやすい。「話題の映画やドラマ」「旅行」など、関連した話題にもつながりやすい(20代)
- 法律や経済の知識が、話のネタになった(30代)
- 歴史・時事など授業で学んだことが、意外と雑談で使えます(40代)
1位は「話のネタに困らない」でした。
文系で学んだ知識や経験は、ビジネスシーンにおける会話の引き出しを増やしてくれることがわかりました。
文学・歴史・法律・経済などは関心をもっている人も多く、初対面のクライアントと距離を縮めるための雑談や、会議や商談前のアイスブレイクなどで役立ちます。
専攻や留学経験などパーソナルな部分を話すことで、相手に覚えてもらえるというメリットも。
文系で培った幅広い教養が会話のネタとなり、人間関係づくりをスムーズにしてくれることがわかりました。
2位 文章を書くのが苦にならない
- レポートを作成する際などに、簡単に作成できる(20代)
- メールの文章を考えることが苦ではない(40代)
- 何か文章を作るときに、言葉を知っていたり、漢字を知っていたりするので、恥ずかしい思いをしない。文章を書くのが苦ではない(40代)
2位は「文章を書くのが苦にならない」でした。
文系ではレポートや論文で書くことも多く、文系で鍛えられた文章力は、社会に出ても役立ちます。
仕事ではメールや報告書・企画書などを書く機会も多いため、文章を書くことが苦にならないのは、作業の効率化や負担感・ストレスの低減に役立ちます。
最近では生成AIでも書類やメールを書けますが、「適切で誤解を生まない表現」や「違和感のない言葉や漢字の使い方」を身につけていることで、AIが生成した不自然な文章をチェック可能です。
3位 コミュニケーションが円滑になる
- コミュニケーションがしっかり取れて、営業でうまくいった(30代)
- 論理的な話ではなく感情的な話に寄り添えるので、顧客に喜んでもらえることも多く、「文系で良かった」と思えました(30代)
- お客様の使う言葉から、本当に必要としていることを拾い出せたときです。言葉のニュアンスを読み取るのも、文系で鍛えられたスキルだと思います(50代以上)
3位は「コミュニケーションが円滑になる」でした。
文系で養った言葉の感覚や、相手の意図を読み取る力は、対人関係で大きな力を発揮します。
例えば「営業の場面で相手の言葉ににじみ出る本音をくみ取り、ニーズに沿った提案につなげられる」といった画面で、文系で良かったと感じた人も。
さらにビジネスシーンでは相手を論破してねじ伏せるのではなく、相手の感情に寄り添うことが大切になる場面もあります。
上記のような場面で文系の強みを発揮でき、良かったと感じる人も多いとわかりました。
4位 わかりやすく説明できる
- 商品のプレゼンで、ストーリー仕立ての説明をしたときに、相手の反応が明らかに変わった瞬間。数字だけでは伝わらない部分を言葉や物語で補えたときに、「これぞ文系の力」と思った(30代)
- 法学部で培った「法的根拠」と「論理的思考力」を使って相手に説明した際は、文系で良かったと感じます(40代)
- 自分の発想や言葉で人を動かせる瞬間に、文系で良かったと強く感じる(50代以上)
「わかりやすく説明できる」が4位です。
根拠がしっかりしていても、数字や専門用語だけでは伝わりにくかったり、論理的なだけでは感情に訴えかける力が弱かったりします。
上記のような場合に、文系の強みを生かしてストーリーや言葉で補えたことで、文系で良かったと感じた人も多くなりました。
また文系の専攻分野で培ってきたスキルや専門知識を生かして説明できたことで、専門性が生き、「良かった」と感じるパターンもあります。
5位 書類を読むのが苦にならない
- 本をたくさん読んできたことで、仕事で読まなければならない書類なども、すらすらと目を通せた(20代)
- 採用を担当したとき、履歴書や自己PRの文章を大量に読んだが、苦痛ではなかった(30代)
- 膨大な量の通達や、都度改訂される規約等を理解する必要性があるときに、難なくクリアできた(40代)
「書類を読むのが苦にならない」が5位に入りました。
文系出身者は文章を読むことにも慣れています。
著名な本を題材に授業が行われたり、論文を読んで感想を書いたりすることも多いからです。
もともと読書が好きで文系に進んだ人もいると考えられます。
社会人になっても、論文・報告書・法令・マニュアルなどを読む機会はあるので、文章を読むのが苦にならないことが強みになっていると感じている人も多くなっています。
文系で養われた仕事で役立っている能力は「コミュニケーション能力」

「文系で養われた仕事で役立っている能力」を聞いたところ、圧倒的1位は「コミュニケーション能力(41.5%)」でした。
2位「文章作成能力(18.7%)」、3位「読解力(10.9%)」が続きます。
コミュニケーション能力や国語力など、「文系で良かったと感じた場面」を支えた能力がランクインしています。
文系の学びで培われ、かつ社会で役立つ能力は「人と関わる力」と「言葉の力」に大きく分類できる結果となりました。
では具体的な回答を紹介します。
1位 コミュニケーション能力
- 文系はコミュニケーション力の高い人が多く、話の引き出しも多く、会話を広げる糸口を見つけるのがうまい(20代)
- 相手を不快にさせずに問題点を指摘できる(30代)
- 文系の人のほうが、傾聴力・共感力が強いと思うので、組織で人間関係をうまく構築できるので強みだと思います(40代)
1位は「コミュニケーション能力」でした。
コミュニケーション能力は仕事の基盤となる人間関係を構築したり、業務をスムーズに進めたりするうえで役立つ能力です。
コミュニケーション能力が役立ったと答えた人はかなり多く、コミュニケーション能力が社会で広く求められていることを示しています。
文系では、授業やゼミ、ディスカッションなどを通じて、人の話を聞き、自分の考えを言葉にして伝え、議論する機会が多くあります。
「相手に合わせて会話を進める力」や「共感しながら話を広げる力」が育まれ、社会に出ても人間関係の構築や問題解決の場面で活かせるのだと考えられます。
2位 文章作成能力
- 仕事でメールや書類などの文章を作成する能力(30代)
- 議事録や報告書などの書類作成で、学校で学んだ構成力が使えます(40代)
- メールでの言い回しなど、ビジネスメールにプラスアルファで柔らかさや温かみを添えることが苦にならない(50代以上)
2位は「文章作成能力」でした。
オフィスワークはもちろん、サービス業や福祉職などでも「報告書」「申し送り」「お礼状」などを書く機会はあります。
つまり、まったく文章を書かない仕事は少なく、文章作成能力はさまざまな仕事の実務面で役立つ能力です。
文系の学びでは、レポートや論文を作成する機会も多くなっています。
そのため、論理の流れを意識しながら文章を構成する力が自然と磨かれますし、レポートの形式を整える癖もつきます。
3位 読解力
- 法律に関することなど、難しい文章を苦労せずに読める読解力(20代)
- 文章慣れしており、論文を読むことへのハードルが低いこと(30代)
- マニュアルなどを正確に読んで、正しく作業できる(40代)
3位は「読解力」でした。
ビジネスシーンでは、マニュアル・研修資料・論文・レポートなどを読む機会があります。
例えばマニュアルを読んで正しく内容を把握できないと、作業を間違ってしまったり、仕事するうえで不安を抱えたりするため、読解力は重要です。
学生時代に多くの文献や資料に触れてきた文系出身者は、文章を読み解くことに慣れています。
マニュアルだけではなく難解な法律や論文でも、抵抗感少なく内容を把握できるため、役立っていると感じるのだと考えられます。
4位 調整力
- 交渉や対話の場面では、調整力が大きく役立っています。多様な考えをもつ人に寄り添いながら、妥協点を見つけて合意を導くことが求められるからです(20代)
- 多様な人と議論する中で培った調整力(40代)
- 会議の際に調整する力(50代以上)
「調整力」が4位です。
組織の中では、常に全員が同じ方向を向いて仕事にまい進するという状態にはなりません。
職種間や部署間で意見の相違が起こることも多いため、仕事を進めるうえでは、異なる意見をもつ人たちの妥協点を探り、結論を出していく調整力が役立ちます。
文系の学びでは、自分と違う人の考えを聞いて意見したり受け入れたりする機会も多いため、調整力が身につきやすいと考えられます。
5位 語学力
- 語学力を使って、外国人と一緒に仕事ができる(30代)
- 英語力。医薬品業界では海外の文献やレポートを読む機会が多く、英語ができるだけで情報収集のスピードと精度が格段に上がります。また近年内資企業もトップ層とは英語でコミュニケーションするようになっているため、英語が使えるだけでキャリアの選択肢やチャンスが増えると思います(30代)
- 外国語ができる(40代)
「語学力」が5位に入りました。
理系だと語学を身につけにくいということではありません。
ただ文系には「外国語学部」「◯◯語学科」などがあり、専門的に外国語を勉強しやすい環境になります。
そして語学力があると、外国人顧客の対応ができたり、英語使用の企業で活躍できたりといったメリットがあります。
さらに最新情報が海外から入ってくるような業界では、文献やレポートを英語でスムーズに読めることによって、仕事の効率ややり方が改善する効果も。
語学力ができることにより、仕事の可能性が広がるとわかりました。
まとめ
文系出身者の強みとしては、「コミュニケーション能力」「国語力」が多く挙がりました。
つまり文系出身者は、情報をわかりやすく整理してアウトプットし、人を動かす能力に長けていると言えます。
数値化や可視化が難しい能力ではありますが、コミュニケーション能力などは企業から強く求められている能力のひとつです。
上記のような能力やスキルを活かす仕事として、営業職・事務職・広報などが挙げられました。
また大学で「法務」「企業経営」「語学」「心理学」「教育」などの専門的な知識を学ぶことで、専門知識を活かせる仕事で強みを発揮できると考えられます。
